慰霊碑の向こうに広がるダム湖へとゆっくり近づいていく。 鳥のさえずりはやみ、ひぐらしが夏の終わりを告げている。 藍色に染まる空にうっすらと姿を現した月は、弱々しい光を放つ星達を護っているみたいだ。 もうすぐ夜が訪れる。 わたしが怖れる、色のない世界。 「結弦……。ほんとうに、ごめんなさい」 小さな柵を乗り越えたわたしの体は、音も立てずに七色ダム湖へと落ちていった。