「いえ、どんな言い伝えですか?」
「七色はね、亡くなった人の想いが、奇跡を起こす場所なのよ」
それならさっき美輝と怜が夢に現れたのも、そのおかげだろうか。
「すてきですね。実際なにかあったんですか?」
「古い言い伝えみたいなものだから具体的にはわからないけど、病気が治ったり、行方不明者が七色で見つかったりすることもあるみたい。あの世とこの世が繋がる場所とも言われているわ」
遙さんの言葉に、ほんの僅かだけど期待が膨らむ。
それが本当だとしたら、今度は夢じゃなくて実際に会えるかもしれないのだから。
「でもね、すごいのはそれだけじゃないの」
遙さんは少し身を乗り出して、小声で続けた。
「七色狭は、四季を通じて川の色が七色に変わることで有名なんだけど……」
七色ダムと繋がっている七色狭は、丁度バスが転落したダム湖の下流付近だ。
そして川の色が変わることは、慰霊碑の場所を調べたときにネットに書いてあったので知っていた。
しかしその先の遙さんの言葉は、それ以上に信じ難いことだった。