なんてことだろう。

 遙さんのお父さんも、わたしと同じバス事故の犠牲者だなんて。

 いや、遙さんのお父さんは亡くなってしまっているのだから同じではない。

 生きているのと死んでしまったのとでは、まるで意味が違う。

 この人は御遺族だったんだ。

 わたしが今日ここに来なければ、辛い記憶を甦らせずに済んだのに。


「すみません。わたしのせいで思い出させちゃって」


 焦って謝罪するわたしに、今度は遙さんが驚いた表情を見せる。


「違うの、琴音さんのせいじゃないの。もう随分前のことだし、悲しくて泣いたんじゃなくて、嬉しいのよ、あなたに会えて。あの事故で奇跡的に生還できた人が、こうしてちゃんと生きていてくれることが……」


 ……そうだったのか。ひとり残された苦悩など、やはり分かってもらえないのかもしれない。


「父の死にまつわること全部が不幸なことじゃなかったんだって思えると、なんだか嬉しいの」


 その言葉で、わたしの心がずきんと音を立てた。


「父は脱サラしてこのお店を作って、半年もしないうちに事故に遭った。だから、わたし達が代わりに夢を受け継いで、お店を守ってきたの」


 失われた三十三人の尊い命。

 その人達の分も、夢を持って強く懸命に生きなければならなかった。

 それなのにわたしは間違えた。

 理由なんてわからない。

 ただ生き方を間違えた。

 この人達に胸を張って会えるような生き方をしてこなかったわたしは、今こうしているだけで、やっぱり罪深い存在なんだと思えてしまう。