「一緒にいてくれて、ありがとう」 黒猫は扉の前まで見送りに来てくれたが、車内に入ろうとはしなかった。お利口さんだ。 扉が閉まったあとも、電車が走り出して見えなくなるまで、おすわりをしてわたしをじっと見つめていた。 黒猫も見えなくなり車内を見渡すと、田舎のローカル線にはもはや数人しか乗客はおらず、座席に困ることはなかった。 目的の駅まではあと二時間ほどだ。 その二時間をわたしは眠って過ごすことにした……。