――わたし達の出会いは、九年前に遡る。
入学式の日、生徒の部活動参加がほぼ強制される高校を選んだわたしは、知り合いのいない学校生活をスタートさせた。
そんなわたしに初めて声をかけてくれたのが、美輝だった。
―― 二〇二〇年 四月一日 水曜日 ――
入学式を終え生徒達がぞろぞろと教室へ戻る間、周囲では徐々にグループが形成され始めていた。
やっぱり、またひとりぼっちかな……。あぁ、やだなぁ。
お昼休みにクラスメイト達が楽しそうにお弁当を食べている中、譜面を目で追いかけるふりをしてひとりで過ごした中学時代。もう、あんな思いはしたくない。
俯いて垂れた髪で隠れた視界から、ちらちらと様子を伺ってみる。
わたし以外は皆おしゃべりに夢中で、とても話しかけられる空気ではない。
どうしよう……どうしたらいいんだろう?
いやな汗がじわりと背中を伝う。
だけど教室に入りクラスの名簿に視線を落としたまま席に着くと、ひとりの女の子が近づいてきた。
『ねぇ、神谷さんって、どの部活に入るの?』
初対面とは思えない自然な口調。
化粧をしなくてもパッチリとした二重にスッキリとした顎のライン。
その女子生徒は少し明るく染めたロングヘアを一つに束ね、爽やかな笑顔でわたしを見つめていた。