言葉が出てこない。

 もしや迷惑だったのだろうか?

 卑屈な感情がつい口をついた。


「もしかして、御迷惑でしたか?」

「迷惑だなんてとんでもない! そんなことは絶対にありません。寧ろこんなにも結弦のことを想ってくれて、親として本当に嬉しい」


 ……本当だろうか?

 いつの間にか大人になってきれいな嘘を覚えてしまったわたしは、やはりどこかで疑ってしまう。この受け取り方がひねくれているとわかっているのに。


「そんなあなただからこそ、僕はあなたにも同年代の人達と同じように、幸せになってもらいたいのです」


 同年代と同じ幸せって、なんだろう……?


「こんなにも一途に結弦のことを想ってくれるあなたなら、きっとこの先もいいお相手が見つかるはずです。こんな状態の結弦では、あなたのことを幸せになんてできない。いえ、寧ろ不幸にさえしてしまっている」


 わたしはただ、結弦のそばにいられれば幸せなのに……。


「親馬鹿かもしれませんが、結弦は本当に優しい子だった。だから結弦も、この状況を見てきっと、あなたに自分のことは忘れて幸せになってほしいと、そう願っているはずです」


 結弦が、わたしに自分を忘れてほしいと? そう願っているということ?


 最後の言葉で体中に衝撃が走る。