遙さんとのお喋りを終えて車で慰霊碑に向かうと、既に葵の車が止まっていた。

 わたしもその横に車を停めて、慰霊碑へ向かう階段を上る。

 先に来ていた葵は丸太の柵に手を添えて、大きなダム湖を眺めていた。


「お疲れ、翔太くんどうだった?」

「前回の復習も完璧だったよ。本当に子どもは上達が早いんだから」


 石板に目を落とし、改めて美輝と怜の名前を確認する。

 ここは相変わらず静かだ。

 自然の音以外なにもない。


「あれから一年ね」


 葵の言葉に様々な想いが去来する。胸がじんとするのを感じながら、わたしはそっと慰霊碑に花を手向けた。


「……うん、そうだね」


 慰霊碑に向かって手を合わせ、そっと目を閉じる。


 夏の空は、今日も眩しい。

 照りつける日差しを覗き込むように目を細めてみても、たった明日の未来さえ、わたし達に見ることはできない。

 それでも、わたし達は明日に向かって、希望を抱いて生きていく。

 かけがえのない未来へと、今日を大切に生きていく。


 切継結弦、巡里美輝、時永怜。

 わたしを救ってくれた大切な三人に、心の中で告げた。




 『――未来を、ありがとう』