……涙を堪えて、次の封筒を手に持った。

 とめはねはらいがしっかりとしている力強い怜の文字。




【神谷 琴音 様

 俺は筆不精っつーか、手紙なんて書いたことねえからよ。

 こんな書き方でわりいな。

 何度も過去に戻っていろんなこと体験できて、今思い返すと全部楽しかったよ。お前のおかげで水泳の面白さにも気づけたしな。

 あ、そうだ。

 いつか言ってた俺の夢、最後に教えてやる。

 俺は水泳部ですっげえ練習して泳ぎがもっとうまくなったら、みんなまとめて助けてやりたかったんだ。

 まあ、それは叶わなかったけどよ。

 あんだけ苦労してお前だけでも助けられたなら、今は満足だ。俺には美輝もいるしな。

 最後まで言えなかったけど、美輝と友達になってくれてサンキュな。

 あいつ毎回お前と友達になれると嬉しそうに報告してくんだよ。

 それくらいお前のことが大好きだったんだろうな。

 だからさ、もうあんまり泣くんじゃねーぞ。

 これからもずっと、元気でな。  時永 怜 】




 ――怜、ありがとう

 怜の叶えたいことって、みんなの夢だったんだね。

 そのために、あんなに一生懸命練習してたんだね。

 本当にありがとう。

 わたし、もう泣かないよ。

 怜と約束する。

 ふたりがいなくても、淋しくて泣いたりなんかしないよ。

 葵もいるし、それにふたりも見守ってくれてるってわかってるから。

 だから、わたしは大丈夫だよ。

 最後まで心配かけてごめんね、怜。