部屋に戻ると一気に眠気が押し寄せてくる。
美輝と励ましあいながらなんとか洗顔と歯磨きを終えると、そのまま布団へと倒れこんだ。
「……ねえ、琴音」
電気を消すと、布団で口を覆ったようなくぐもった声で美輝がぽつりと呼びかけてきた。
「なに?」
美輝がころんと寝がえりを打ち、上目遣いで覗き込むようにわたしを見つめてくる。
「一緒に寝ようよ」
やっぱり美輝はかわいい。
たまに見せる子どものようなあどけなさに、胸がときめく。
嬉しかった。
断る理由なんてない。
ただひとつ気になるとしたら、わたしの寝相の悪さだけだ。
「もちろんいいけど、わたし寝相悪いよ?」
くすくすと笑う美輝が、「気にしないよ」と言って布団に潜り込んでくると、わたしの背中に手を回してきた。
わたしも同じように美輝の背中に手を回す。
美輝の体はふわふわしていてまるで猫みたいだ。
美輝の吐息と体温が、わたしの中に溶けていく。
わたしの鼓動と美輝の鼓動が、重なりあって混ざりあう。
それはふたりが確かに生きて、ここにいる証だ。
美輝のぬくもりは安らぎとなり、わたしはたちまち安息の眠りに誘われていった。
眠りに堕ちるまどろみの中、意識が途切れる寸前に美輝の声が聞こえた。
「琴音……。きっと、忘れないで……」
重いまぶたを僅かに持ち上げて窓に目をやると、お祭りで取ったわたしと美輝のヨーヨーが、静かに仲よく揺れていた。