神社の境内に笑い声がこだまする。

 屋台で買ってきたごはんを食べながら時間が経つのも忘れて笑い合っていると、突然大きな音が響き渡り、色とりどりの大輪の花が夜空を鮮やかに色づけた。


「花火だー!」


 美輝が空を指差して声を上げると、四人で並んで夜空を見上げた。

 目の前で打ち上がる大きな花火。

 いくつも輝いて散っていくその姿は、まるで夜空自体が大きな万華鏡みたいだ。

 花火の光と音が、わたしの胸に切なく響く。

 この想いを忘れたくなくて、夜空へ密かに願いをかけた。

 ――これからもずっと、みんな一緒に思い出を積み重ねていけますように。

 恥ずかしくて言葉には出せないけれど、この気持ちを素直に伝えられたとしたら、明日のわたしはもっと変わることができるのだろうか。

 さっきまで気持ちよさそうに眠っていた猫も、結弦の腕の中から花火を見上げている。

 次々と打ち上がる花火を眺めていると、ふいに結弦がわたしに囁いた。


「琴音、今日ここで見た花火を、忘れないでいてね」


 星空を見上げていた昨日の結弦の横顔と、花火を見上げている今の結弦の横顔は、同じように彼方へと向けられていた。

 その表情が気にかかったが、わたしは切なさを胸に抱いたまま小さく頷いて返した。