結弦は歩き始めると、はぐれないようにと手をつないでくれた。

 笑い声や呼び込みで賑わう夜道に、祭囃子が響く。

 田舎のお祭りの喧噪は、都会のそれと違ってどこか静けさを感じさせる。

 結弦と浴衣デートをしたのはこれが初めてだった。意識すると急に恥ずかしくなってきて、照れ隠しのように透明なヨーヨーを手の平でばんばん弾ませると、結弦がそれを見てくすりと微笑んだ。


「琴音はこれをどう色づけていくんだろうな」


 そんなこと言われても正直わからない。

 みんなにはそれぞれ色があって、合わせると虹色になるのなら、わたしにはどんな色が残されているんだろう?

 だけど……、


「みんなの色が混ざり合うような、そんな色がいいな」


 さっきヨーヨーで作った、夜空に架かる虹のような、そんな色がいい。


「そうだね、琴音はみんなの想いを繋いでくれた。そんな琴音には虹色が似合うのかもしれないな」


 想いを繋いだとか言われて嬉しいけれど、わたしにそんな自覚はない。


「でもみんなには助けてもらってばかりだし、これからも迷惑かけちゃうかも」


 変わりたいとはずっと思っているけれど、なかなかうまくいかない。


「琴音は自分で思ってるよりずっとたくましくなったよ。だから、もう悩まなくても大丈夫さ」


 結弦はつなぎ直したわたしの手に、優しく力を込めて言ってくれた。

 なんだかスッキリした笑顔だな、と思う。

 結弦も旅行中、どこか物思いにふける様子を見せていた。

 大学受験を控えて色々思うところがあったのかもしれない。

 それを晴らすのを、少しでも手伝えていたのなら嬉しい。