次は怜の案で、ヨーヨー釣りをして遊ぶことになった。


 小さな桶でくらげみたいにゆらゆらと水に漂っているヨーヨー。

 ところどころに浮かんでいるアヒルのおもちゃが、いいアクセントになっている。

 ヨーヨー釣りなんて小学生以来で、今やると結構難しい。

 うまく針が掛からなかったり、アヒルに邪魔をされたりで、結局わたしはひとつも吊り上げられないまま針が落ちてしまった。


「よし、交代だ。俺がみんなに似合う色を選んであげるよ」


 結弦は桶の向かいに座るおじさんにお金を払うと、釣り針をもらい、品定めするかのようにヨーヨーを見つめていた。

 わたしに似合う色って、どんな色なんだろう? 自分に似合う色なんて考えたこともないわたしは、結弦が選んでくれる色を密かに楽しみにしていた。

 結弦が釣り針をそっと桶の中へ落としていく。そのままゆっくり引き上げると、オレンジと赤が混ざったヨーヨーが桶から吊り上げられた。


「はい、これは美輝だよ。美輝は太陽みたいに明るいけれど、心は夕焼けのように繊細だからね」


 美輝が少し照れたように、「ありがと」と言って差し出されたヨーヨーを受け取る。


「これ、まだ取っちゃっていいですか?」


 結弦が訊ねると、おじさんは優しい口調で許可してくれた。


「あぁ、切れるまで取ってくれてかまわないよ。お兄ちゃん上手だねえ」


 結弦は慣れた手つきで、いとも簡単に次のヨーヨーを取ってしまう。


「これは怜」


 怜に差し出していたのは、赤と紫が混ざったヨーヨーだった。


「怜は一見クールに見えるけど、心の中はいつも真っ赤に燃えあがってるもんな」


 小さい声で「サンキュ」と返した怜も、結弦からヨーヨーを受け取る。

 結弦は次のヨーヨー目がけてじりじりと針を落としていく。

 小声で「よしっ」と呟くと、そのまま針を持つ手をゆっくりと宙に上げた。


「琴音はこれだ」


 ――え?

 ……これって。