玄関をくぐると、フロントに座っていた千佳さんに声をかけられた。
「おかえりなさい。お祭りはこれから?」
結弦が浴場のほうを指差して答える。
「うん、先にお風呂入ろうと思って戻ってきたんだ。もう使えるよね?」
「ええ、お湯も張ってあるわよ。それより戻ってきてくれてよかったわ。琴音ちゃん、美輝ちゃん、こっちへいらっしゃい」
男の子はいいから、と付け加えた千佳さんはわたし達にだけおいでおいでと手招きをしている。
「準備ができたら部屋に来て」と言う結弦の言葉に返事をすると、千佳さんのあとを追いかけた。
なんだろう? 朝の仕事でなにか失敗した……とかじゃないよね。
おそるおそる千佳さんのあとに続いて、一階の奥の部屋へと入った。