戸惑っていると、結弦がその質問を葵ちゃんに投げた。
「葵、どうしてわかったんだ?」
「なんとなくよ。天伽の第六感ってやつね」
第六感って、そんな不確かな理由で見抜いたの?
「さすがだね。葵は天伽っていう、近くの神社の巫女なんだ。小さい頃から巫女になるために色々仕込まれてたもんな」
神社の巫女。そういうのって本当にいたんだ。 初詣のアルバイトしか見たことがないからいささか新鮮だ。
「へえ、巫女って普段はどんなことするんだ?」
いつの間にか美輝に沈められた怜が復活して会話に加わっている。
「神職の補助が主だけど、夏は祭事があって、迷える死者の魂を導いて弔うの。それが一番の大仕事ね」
お盆の時期に迷ってる死者がいるの? 帰ってきてるんじゃなくて?
不思議に思っていると今度は美輝が訊ねた。
「迷える死者の魂って、お盆に帰ってくる御先祖様なんかとはまた別なの?」
「それとは違うわね。あたしが弔うのは、事故とかで突発的な死に遭遇して、この世に強い未練や後悔を残して亡くなった人の魂のことよ」
事故……。
突発的な死……。
それを聞いて、なぜだかぶるっと身震いがする。
「現世ではそういう人の魂が、未練のきっかけになった日から人生をやり直していることがあるの」
――人生をやり直せる、それって誰もが望む、とても羨ましいことなんじゃ……。
「ただやり直せるだけならいいんだけど、それはある意味呪いと同じ、永久の地獄なのよ。なにせ未練を解消しない限りずっと同じ時間を繰り返すんだからね」
一瞬冷えた空気が辺りを包み込んだ。
ということは、未練のきっかけになった日から自分が死ぬその日までを何度も繰り返すの?
そんなの、死ぬよりもっと怖い。