のどかな田舎道を笑いながら歩いていると、ひとひらの風が吹き、鳥が羽ばたいていく音が聞こえた。
「なんだか今日は賑やかね」
声がするほうに視線を向けると、電柱の陰から見知らぬ女の子が顔を覗かせている。
淡い色の長い髪を留めているのは、蝶をモチーフにした髪飾り。
そこから伸びた紐の先には、水晶のような綺麗なガラス玉が付いている。
動きやすそうな服装に白いスニーカーがよく似合っていて、猫のようで狐のような、くりっとしたかわいい瞳が印象的な女の子だ。
「ひさしぶりね、結弦」
この子が葵ちゃん、なのかな……?
胸のざわつきは本人を目の当たりにすると、嘘のように引っ込んでいった。
「もしかして……」
言葉を詰まらせる結弦の瞳に、喜びの色が浮かびあがる。
「わからない? あたしよ」
「やっぱり……葵! うわぁ、ひさしぶり! 変わらないね」
結弦が手を挙げて応える。
その表情からは懐かしい旧友との再会を心から喜ぶ気持ちが伝わってくる。
「結弦のお友達かしら? はじめまして、あたしは天伽葵。結弦とは幼馴染みなの、よろしくね」
爽やかで愛嬌がある葵ちゃんを見ていると、勝手にヤキモチを妬いていた自分が恥ずかしくなる。
「わたし、巡里美輝。よろしくね葵ちゃん」
「俺は時永怜。葵ちゃんって結弦のこと好きだったの?」
言い終えると同時に美輝の肘が怜の脇腹に突き刺さると、怜はその場にうずくまっていた。
「えと、神谷琴音です。よろしく」
幼馴染みってことはおそらく同年代だろうけれど、わたしはどこか緊張して、思わず敬語になってしまう。
なんとなく恥ずかしくなって俯くと、すかさず葵ちゃんが覗き込んできた。
「ふーん、あなたが結弦の彼女ね」
葵ちゃんは一瞬鋭い眼光を見せると、わたしと結弦の関係をさらりと言い当ててしまった。
まだ自己紹介しかしてないのに、なんで?