頭を抱えて悶えていると、結弦と怜が階段を下りてきた。


「あれ? 琴音なにしてんの?」


 変なポーズで固まったわたしを見て、結弦がいつもの笑顔で言う。その爽やかさがなんだか憎たらしい。


「……なんでもない」


 こんなところで、葵って誰よ! どこの女よ!

 なんて言うほど馬鹿じゃない。

 そもそも別に結弦が浮気してるわけでもないし、ただわたしが得られなかった幼馴染みってポジションを妬んでいるだけだ。

 みんなに背を向けて一足早く玄関で靴を履くと、結弦は少し慌てたようにお祖母さんに声をかけた。


「じゃあ行ってくるよ。一旦帰ってくるかもしれないけど、夕食はお祭りで食べるからね」

「はいはい、行ってらっしゃい。葵ちゃんによろしくねえ」