食堂では数人の仲居さんが休憩を取っていた。

 美輝と適当な席に腰かけると、ほどなくして真新しいシャツに着替えた結弦と怜が姿を見せた。


「お昼ごはんまで用意してもらっちゃって、なんか悪いね」


 こういうことが、やっぱり気になってしまう。


「従業員への賄いってやつさ。それに夕食は外で食べるからね。遠慮しなくて大丈夫だよ」


 結弦がグラスの水をぐいっと飲み干して言うが、そう言われても気になってしまうものは仕方ない。

 でも今の言葉には、もうひとつ気になることが含まれている。


「じゃあ夜は外食ってこと? どこかにお店があるの?」

「いや、夏祭りだよ。屋台が出るだろ」


 そういえばすっかり忘れていた。今日は夏祭りで夜には花火も上がる。わたしはそれを楽しみにしていたんだ。


「琴音、一緒にりんご飴食べようよ」


 美輝が大袈裟なほど嬉しそうな笑顔を携えて言った。


「俺は串焼きだな」


 怜も夏祭りと聞いて、幾分元気になってきたらしい。

 夜のことを考えると、午後からの草刈り作業も頑張れる気がする。

 夏祭りが原動力になるのは間違いなさそうだ。