お見送りを終えると各部屋のリネンを集め始めた。けれど、これが思った以上に重労働だった。水を吸ったタオルやリネンが入った袋はとても重く、それを抱えて裏口まで何度も往復しなければならない。普段からあまり運動をしないわたしはすぐに汗だくになっていた。
「琴音、大丈夫? 無理しないでよ」
わたしを気遣ってくれる美輝は、進んで二階を引き受けてくれている。
「うん、大丈夫。終わったら手伝いに行くから、美輝も無理しないでね」
美輝を守れるくらい強くなるって決めたんだから、へばってなんかいられない。そう自分を奮い立たせ、なんとか一階のリネンを集め終えると美輝のもとへ急いだ。
「美輝、終わったよ。そっち大丈夫?」
美輝は額に汗をいっぱい溜めていたが、疲れは感じられなかった。
むしろその表情からは充実感が窺える。
陸上部だから体を動かすことが楽しいのかもしれない。
「一階もう終わったの? 今日のチェックアウト、一階のほうが多かったんだよ。すごいじゃん琴音!」
そんなの考えてもいなかった。
わたしはてっきり二階のほうが階段があって大変だとばかり思っていたから。
「そ、そうなの? 知らなかった。あ、そんなことより手伝うよ。あとどの部屋が残ってるの?」
「二階もこの部屋で終わりだよ、ありがとう」
美輝も二階から一階の往復をひとりでやり遂げ、わたし達はお手伝いを終えた達成感をふたりでわかち合うと再び事務所へと戻った。
「ふたりともご苦労様。お手伝いはこれで終わりよ。本当にありがとう」
「こちらこそありがとうございました。とっても楽しかったです!」
素直な感想を大きな声で口にすると、長谷川さんはくすくすと笑った。
「もう少ししたらお昼だから、裏庭のふたりも呼んであげてくれる? わたしはこれから出かけるけど、あのふたりの面倒よろしくね」