……頭がこんがらがってきた。
なぜ現実に会話していないのに、その内容が頭に浮かぶんだろう。
記憶が二重になっている。
なにがなんだかわからない。
「琴音、どうしたの? 気分悪い? 大丈夫?」
美輝が不穏な表情でわたしの顔を覗きこむ。
「ううん、なんでもない。ちょっと変なこと思い出しちゃっただけ」
咄嗟にごまかしてみるが美輝の目は懐疑的だ。
昨日からどこか歯車が噛み合わない。
というかなにか違和感がある。
温泉で美輝の様子がおかしかったのも気になるし、寝る前にあんなに泣いていたのも、今考えると美輝らしくない。
わたしもバスで夢を見て以来感情のコントロールが鈍い。
あの夢の内容が妙にリアルだったせいもあるけれど、なぜだろう……?
すぐに感極まるというか感情が高ぶるというか、旅行ってこういうものなのだろうか。