七色ダム湖へのバス転落事故から、結弦はずっと眠り続けている。
七年間ほとんど欠かさず続けてきた結弦との週末の時間は、いつもわたしが一方的に話すだけ。
いつ目覚めてくれるのだろう? このままだとわたしは、世界にひとりも同然なのに。
午前中に一週間の出来事などを一方的に話して、お腹が空くと買っておいたおにぎりとお茶で昼食を摂る。
午後からは結弦の隣で本を読んで過ごした。
褥瘡ができないようにと、看護師さんが何度か来ては結弦の体勢を変えてくれる。
そろそろ帰らなきゃ、と思った頃に顔見知りの看護師さんに声をかけられ、少し談笑をしてからわたしは病室をあとにした。
病院からの帰り道。夕日に照らされたわたしの影は、いつものように長く伸びている。
この影がいくつも重なると、週に一度の安らぎの時間は終わりを迎えて、暗い夜が訪れる。
ひとりで過ごす長い夜。
そして夜が明けると、また色のない一週間が始まる。
せめて星が瞬いていないかと夜空を見上げても、ビルだらけの都会の空は真っ黒でなにも見えない。
あの事故以来、わたしの中のなにかが少しずつ欠けていくのを感じていた。