食堂につくと遠慮気味な挨拶をしながら厨房へ入った。

 真ん中の大きなまな板には魚が山盛りになっている。

 包丁を握った男性が、そこから一匹ずつ手に取り丁寧に捌いていた。

 きっとこの人が井関さんだ。


「おう! 結弦のお友達かい。連休中えっちゃんが実家の用事で来れなくてなあ。遊びに来てるとこ悪いねえ」


 えっちゃん?

 バイトかなにかの人だろうか?


「いえ、全然大丈夫です。あっ、昨日の夕食も今日の朝ごはんもとってもおいしかったです。ありがとうございました」


 緊張で固まってしまっているわたしの代わりに、美輝が会話を進めてくれる。


「いやあ、昨日は危うく仕込んだ魚が無駄になっちまうとこだったし、君らたくさん食べてくれてよかったよ。こっちこそありがとねえ」


 そう言われて昨日の食事風景を思い返すと、なんだかわたし達が大食漢のようで恥ずかしい。


「洗い物はそこに溜まってるやつだから、よろしく頼むね。濯いで食洗機に入れたらスタートを押すだけ。簡単だろ? 終わったら拭いて種類ごとに重ねてくれればいいからね」


 井関さんが指差したほうを見ると、シンクの中に食器が乱雑に積み上がっている。

 靴裏の消毒を済ませて下がってくる袖をクリップで留めると、洗い物を開始した。