「ど、どうしたの? 美輝」
なにか気に障ることを言ってしまったのだろうか?
「あの、もしいやだったら結弦と行くから、無理しなくていいよ」
「違うの。いやとかじゃなくて……ただ、どんな映画だったかなって思い返してただけ」
「ああ、えっとね、事故に遭った幼馴染みを助けるために、ひとりの女の子が何度も過去をやり直して……」
「――やめてっ!」
美輝が大声でわたしの話を遮った。
初めて見るその剣幕にわたしも言葉を失ってしまい、一瞬の静寂が訪れる。
「ご……ごめん、急に大きな声出しちゃって」
美輝の呼吸は荒く、おかしいくらいに乱れている。
「大丈夫? ごめんね。ホラーじゃないんだけど、美輝こういうの苦手だったっけ?」
「あ、うん。いや、事故に遭ったってとこにちょっと怖くなっちゃって……。ほら、一応昼間のあれも事故でしょ? だから……」
迂闊だった。なんて馬鹿なんだわたしは。
バスの中で事故に遭うだのと散々恐怖を煽っていたくせに、大事に至らなかったことに安心してしまって、美輝がどう思っていたかを考えていなかった。