そのときだった。
「オリヴィアさんっ!!」

 王宮の庭に、声が響いた。その瞬間、パッと光が差した気がした。
 オリヴィアは顔を上げる。青々とした空に目を向け、声の主を探した。

 浮かんでいたのは、レイルだった。隣にはソフィアもいる。

「レイルくん……? ソフィアさん……?」
「オリヴィアさん!」

 レイルはソフィアと共に降りてくると、真っ先にオリヴィアの元へ駆けよった。
 その勢いのまま、レイルはオリヴィアを強く抱き締める。

 苦しいくらいに強い力だった。レイルの匂いがふわりと鼻を突き抜けた。その途端、ずっと張っていた心の糸が、プツッと切れた。

「うっ……」

 一度堰を切った涙は留まることを知らず、ぽろぽろと次から次へ零れていく。オリヴィアはレイルにしがみつくように抱き着いた。
 
「レイルくんっ……レイルくん」
「良かった……ごめんね、オリヴィアさん……迎えに来るのが遅くなって。もう大丈夫だからね」

 レイルは、小さく震えるオリヴィアの背中を優しくさすり続けた。