衣緒と叶氷は恋人同士だ。
それなのに何故、こうなってしまったのか。
「う、うん。それは、そうだけ、ど…」
衣緒が言葉につまるのも当然。
反論しようと顔を上げた彼女の視線の先、叶氷の瞳には、一切の光も宿っていなかった。
「衣緒、大丈夫。怖がることはないよ。」
その瞳のまま、叶氷は薄く微笑む。
「あぁ、でも、怯える表情、それさえも美しいね。」
そっと、衣緒の頬へ片手を添える。
その手は、驚くほど冷えきっていた。
「僕たちは何も間違っていない。ねぇ、衣緒?衣緒もそう思うでしょ?」
同意以外の言葉を聞き入れないような圧力。