「重くないですか?」

「大丈夫です。ふふっ、力尽きてしまったのですね」

 起さないよう優しく頭を撫でると、眉上で切りそろえられたパッツン前髪が額にサラリと落ちる。

 安心しきった顔で、むにゃむにゃ寝言をいいながら眠るイアンは悶絶するほど愛くるしい。

 しばらく寝顔をじっくり堪能したあと、私は正面に向き直った。

「アシュレイ様。近々、イアン様と一緒に街へ出かけても良いですか?」

「構いませんが、何か必要な物でも?」

「必要というか……この子の、この前髪と髪型。どうにかしたくて」

 アシュレイの表情がぴしりと固まる。

 私は、やっぱりかと思った。

「この子のパッツン前髪、切ったのはアシュレイ様ですね?」

「いや……その……はい、俺です。髪の毛が目に入って邪魔だと言うから、切りました」

「理髪店に行かなかったのですか?」

「その時は、思いつきもしませんでした。騎士は、自分か騎士同士で髪を切るのが当たり前なんです。長期任務の際などは、いちいち理髪店にいけませんから。それで――」

「ついハサミでジョキジョキとやってしまった、と?」

 アシュレイは、お恥ずかしながらと頷いた。