一日が光の速さで過ぎ去っていく。

 令嬢時代も淑女教育や習い事で忙しかったけれど、今はその比じゃないくらい時間の流れが速い。
 
 勉強やマナー教育といった家庭教師の仕事に加えて、イアンの理解度に合わせた教材選び、学習計画の作成。分かりやすく教えるために、私自身の予習復習も欠かせない。
 
 仕事ってつくづく大変……。と思いつつ、楽しんでいる自分もいる。

「ビッキーの授業おもしろい!」と言われれば、思わずガッツポーズしちゃうくらい嬉しいし、好奇心旺盛なイアンと一緒に新しいことを学ぶ瞬間は私もわくわくする。

 これまでの人生の中で、一番充実しているのはいつですか?と聞かれれば、私は迷い無く『今です!』と答えるだろう。

 それほど、ここでの生活は新鮮で楽しかった。
 
 そうこうするうちに。
 気付けば、住み込みの家庭教師を始めて一週間。
 
 
 勉強部屋で国語のテキストに向かうイアンの隣で、私は学習計画表と睨めっこしていた。
 
 イアンの始業式まで、残り一ヶ月弱かぁ……。
 
 算数や理科などの得意科目は、進学校である貴族学園でも十分通用するレベル。

 だが一方、国語や外国語などの苦手科目については、もう少しお勉強が必要だ。
 
 さらに勉強だけでなく、上流階級の礼儀作法や話し方、ダンスの練習もしなきゃいけない。


 とりあえず勉強は苦手科目を重点的に。マナーは日常生活の中で習慣化させるとして……。