「イアン様って、もっと大人しい子だと思っていたんですが……」

「割と人見知りなので、お客様の前で猫をかぶっているときは大人しくて良い子なんです。ですが、いったん心を開いた相手には……手のつけられないワンパク怪獣です」

「ワンパク怪獣……」

 おもちゃ箱をひっくり返すような大きな音が、再び上階から聞こえてきた。
 
 私は、超短期間でワンパク怪獣をお貴族風に出来るだろうか……。

 はじめてのお仕事で、わりと高難易度ミッションでは??
 
 
「とりあえず、心を開いてもらえて良かったです。頑張ります。ははは……」

 
 一抹の不安を覚えながらも、やるしかないと自分を奮い立たせる私だった。


◇◇
 
 
 それから私はアシュレイの執務室で雇用契約書を取り交わすこととなった。

 期間はとりあえず、イアンが新学期から貴族学校に転入して落ち着くまで。仕事内容、給与、勤務時間などは事前情報どおりで、福利厚生も充実している。

 期間限定の仕事とはいえ、かなりの好待遇だ。