「貴方は、ビクトリア・フェネリー侯爵令嬢ですか……?」

 気付いてなかったんかーい!
 
 「はい」と返事をすると、アシュレイは尚も珍獣を観察するように、まじまじと私を見つめた。

 確かに髪型とメイクを大幅に変えたけど、そんなに分からないものかしら?

 とりあえず、改めて自己紹介をしましょう。

「家庭教師の面接に参りました。ビクトリア・フェネリー改め、ビクトリア・キャンベルです。本日はどうぞ宜しくお願い致します」

「え、ええ……、どうも。なぜキャンベル姓を……? というか、なぜ高位貴族のご令嬢が家庭教師を?」

「侯爵家を出ましたので、私はもう貴族令嬢ではございません。今後は遠縁のキャンベル家の姓を名乗り、職業婦人として生きていく所存です」

「侯爵家を出た? それは、また一体」

 私は手短に経緯を説明する。その間、アシュレイは一度も余計な口を挟まず、あいづちを打ちながら真剣な顔で聞いていた。