そのあまりの愛らしさに魅了された私は、たまらず胸を押えて「ぐうっ」と声を上げた。

 何を隠そう、私は無類の可愛いもの好きだった。

 特別子どもが好きな訳ではないけど、小さくて可愛いものを見ると胸がキュンとしてしまうのだ。
 
 めちゃくちゃキュートなイアンに私はハートを打ち抜かれてしまった。胸を押えてぷるぷる震える私の顔を、イアンが気遣わしげにのぞき込んでくる。
 
 
「ビッキー、どうしたの?胸が痛いの? もしかして、心臓が痛い?」

「持病の可愛いもの好きが……、いえ、何でもありません。大丈夫です」

「ジの、びょうき……??」

「いえいえ! 痔の病気ではありませんよ」

 イアンが無邪気な顔で「ん?」と首をかしげる。
 
  まずい。このままじゃ私は、特にアピールポイントもないまま、痔の病気(疑惑)の家庭教師という印象になってしまう。なんとか挽回を図らなければ。
 
 私はにっこり爽やかな笑みを浮かべると、さりげなく話題を変えた。

「私、ダンスはとても得意なんです。もしイアン様の先生になれたら、一緒に練習しましょうね」

「うんっ!僕、ダンスの練習したい!」


 イアンがキラキラお目々のわくわく顔で私を見上げてくる。

 その時、廊下の方から足音が聞こえて来て、ノックのあとに男性が部屋に入ってきた。