「僕は、かけっこと剣の練習が好きです! 勉強はあんまり……。あとママとパパと、アシュレイが好き。それとキャシーも……」

「体を動かすのがお好きなんですね。じゃあ、お勉強に疲れたら、一緒にダンスを踊って気分転換するのも良いですね」

「ダンス!」

 それまで緊張した面もちだったイアンが、ぱあっと表情を明るくした。

 ぴょんとソファを飛び降りて私の元へ歩いてくると、隣にちょこんと座った。そして、ややうつむきがちに「あの……」と、もじもじしながら口ごもる。
 
 私は「ゆっくりお話して頂いて大丈夫ですよ。私、イアン様のことが知りたいんです」と優しく促した。

 するとイアンがほっとした顔をして、少しずつ話し出す。

「僕、こんど、貴族の学校に転校するんだ。そこで、ダンスをおどるパーティがあるって聞いたんだけど……」

 そわそわしたイアンの言動から私はピンときた。

「もしかして。一緒にダンスを踊りたいご令嬢がいるのですか?」

「……うん」
 
 頬を桃色に染めて、こくりと首を縦に振るイアン。