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 新興貴族の屋敷が建ち並ぶ新市街の一角。
 
 目的地であるクラーク男爵邸は、想像以上に真新しく大きな屋敷だった。

 門番に訪問理由を告げると、すぐさま執事が出迎えにやってきて応接間へ通される。外観もすばらしく立派だったが、屋敷の中も広々としている。
 
 落ち着いた色合いのオシャレな内装、さりげなく置かれた高価な調度品。

 パッと見ただけでも、この屋敷の主人のセンスの良さと裕福さが十分よく分かった。
 
 
「旦那様を呼んで参りますので、少々お待ち下さい」

 執事が一礼して去り、部屋にひとり取り残された。

 ソファに腰掛けて待つ間に自然と緊張してきてしまった。大丈夫、大丈夫……と言い聞かせて、深呼吸を繰り返す。

 今世での就職面接は初めてだが、前世では数多くのオーディションに挑んできた私。

 これくらいの緊張、はね除けて合格してやろうじゃないの――!

 心を奮い立たせて、頭の中で面接の想定問答を組み立てていると、数分もしないうちにコンコンと扉がノックされた。

 溌剌とした声で「はい!」と返事をして立ち上がる。