給与、勤務時間、職務内容ともに申し分ない。
 
 最初からこんなに好待遇な仕事を紹介してもらえるなんて。

 これを逃したら、後悔してもしきれないわ。

「勉学と上流階級の礼儀作法については心得があります。このお仕事、ぜひ私にお任せ下さい」

 自信たっぷりに言うと、係員はすぐに紹介状をしたためてくれた。

「依頼主様は本日、ご在宅だそうです。面接は直接屋敷に来て欲しいと仰っていましたので、この紹介状を持って行って下さい」

「ありがとうございました」と、お礼を言って私は紹介所を出た。
 

 さあ、職業婦人としての第一歩だわ。面接、頑張りましょう!


 心を奮い立たせて、足取り軽く最寄りの停留所まで歩く。そこから乗合馬車を利用して目的地へと向かう予定だ。
 

 停留所のベンチに腰掛けた私は、紹介所でもらった書類を詳しく見て――。

「これって……」

 覚えのある依頼人名に驚き、目を見開いた。