目的地に着き馬車を降りた私は、事前に面接の予約を入れていた、この街で一番大きな職業紹介所に足を踏み入れた。
 
 午前は教養知識やマナー、語学のテストを受け、午後にはその結果を踏まえて仕事を紹介される。

 担当になった女性係員が、テスト結果を見て驚きの表情を浮かべた。

「凄いですね。ほぼ満点ばかり。これなら、職歴がなくても教育関係のお仕事をご紹介出来そうです」

「ありがとうございます。可能であれば、住み込みの家庭教師を希望しています」

「はい、少々お待ち下さいね。ええっと、じゃあ、これなんかいかがでしょう」
 

 そう言って彼女はファイルから書類を取り出した。
 
 そこに記載されていたのは、私の希望どおり、住み込み家庭教師の仕事だった。


「雇い主は、最近爵位を得た新興貴族の方です。お子様を新学期から貴族学校に転入させるため、勉強だけでなく、上流階級のマナーも教えて欲しいとのことです」