夢の中で得た知識ですとは言えず。「こっそり練習したの」とあらかじめ用意していた言い訳をサラッと告げた。
 
 
「よし、準備万端ね」
 
 私は深く深呼吸をしてリビングに向かった。

 両親は横目でこちらを見て『なんだ、その格好は!』と驚いた顔をしたが、何も言わない。

 無視作戦はまだ続いているようだ。

 まだ私をコントロール出来ると思っているのね。でも、もう言いなりにはならないわ。おあいにく様。
 

「お父様、お母様、おはようございます。それと、今まで育てて下さり、ありがとうございました。私は本日をもってフェネリー侯爵家を離れます」

 私の言葉に、両親は眉をひそめる。
 特に父は新聞を乱暴にテーブルに叩きつけ、こちらを鋭い目つきで睨んだ。
 
「は? 朝から何を馬鹿なことを言ってるんだ。いい加減にしろ! お前はもう何も考えなくていい。新しい嫁ぎ先が見つかるまで、とにかく大人しくしていろ!」
 
「ご命令には従えません。これからは自分で考えて生きていきます」