「少々、出過ぎた真似をしてしまったようです」

「そんな、とんでもありません! クラーク様が助けて下さらなければ、父に階段から突き落とされていました」

「フェネリー侯爵は日頃から、あのような振る舞いを?」

 ええ、そりゃあもう。毎日暴言祭りで大変なんですよ、と言いたい所だが、私は明日には家を出る身。

 今さら父の横柄な態度を騎士に密告して、面倒事に発展するのはごめんだ。
 
 私は微笑を浮かべて当たり障りのなく返答した。
 
「父は激情家なところがありますが、暴力を振るうことはないんです。明日には落ち着くと思いますので」

「不安なことがあれば、騎士団に連絡を」

「ご心配ありがとうございます」

 そんなやりとりをしている間に、馬車の前に到着した。