一方、オスカーに未練たらしい恋情を向けられ、エリザにお門違いな恨みを抱かれている事など知るよしもないビクトリアは、広間を出てひとけのない廊下を歩いていた。

 
◇◇ 
 
 周囲を見渡し、廊下に誰もいないのを確認した私は、思わず「よしっ!」とガッツポーズした。
 
 や、やり切った~~~~!

 わきあがる開放感と達成感で、人目がないのを良いことに、ルンルンご機嫌に鼻歌をうたって軽やかなスキップまでしちゃう。

 あんなにきっちり謝ったんだもの、これ以上だれも文句は言えないでしょう。

 晴れて私は、オスカーとエリザの恋路を邪魔する悪役ポジションから脱却しました!
 めでたし、めでたし。

 面倒な関係を綺麗さっぱり清算して、『自由だぁ~~!』と浮かれていられたのも束の間――。

 
「ビクトリア!! 貴様ッ」

 鬼の形相で近付いてくる父親に私は思わず「げげっ」と呟いた。