当時は運命だと思ったが、今なら分かる。あれは偶然ではなく必然。

 エリザはオスカーの傷心につけこむため、虎視眈々と機会を窺っていたのだ。
 
 天真爛漫を装ったエリザの誘惑に負け、オスカーは衝動的に肌を重ねてしまった。
 
 それから幾度となくエリザとの逢瀬を重ね、坂道を転げ落ちるようにのめり込んでいった。

 エリザはオスカーのどんな要求にも喜んで応じてくれた。正直、都合の良い女だと思ったのだ。
 
 融通の聞かないビクトリアを捨てて、何でも言うことを聞く私を選んで?――というエリザの甘美な提案にオスカーは乗った。

 ――僕はエリザのいいように操られていたんだ……。
 
 一時の快楽と衝動に身を任せた自分の愚かさに、オスカーは打ちのめされていた。

 
 だからこの瞬間、隣のエリザが呟いた言葉を聞き逃してしまった――。
 
「まだ私の邪魔をするつもり? ビクトリア。あなたって本当に嫌な女。この泥棒猫」