ビクトリアと一緒にいると息が詰まる。
 
 その一方で、エリザと居るときは楽しかったのに……。

「もうっ、上の空になるのはやめて下さいませっ! ビクトリアより、私のことが好きなんでしょう? ねぇ、ちゃんと好きって言って!」

 子供のように駄々をこねるエリザを見ながら、オスカーは思った。

 
 ――僕は選ぶ方を間違えたかもしれない、と。

 
 額に手を当て目を閉じると、まぶたの裏に浮かんだのは、先程ビクトリアが見せた美しいほほ笑みだった。

『オスカー様、どうかエリザさんとお幸せに』

 悲しみを堪えてオスカーの幸せを願うビクトリアのなんと健気なことか。

 
 ――あれが、彼女の本来の姿だったのかもしれない。

 真面目で面白みがないと思っていたが、王室の一員になるために相当な無理をしていたのだろう……。

 自分から捨てたというのに、今さらながら彼女が恋しくて仕方ない。

 
 ――謝ったら、ビクトリアは許してくれるだろうか。