ぷくっと頬を膨らませてエリザが問う。顔は可愛らしいが、質問はうんざりするほど面倒だった。

「もちろんエリザさ」

「じゃあエリザのお願い聞いてくれるでしょう?」

「だから、それは出来ないと言っているだろう。頼むから、口調もちゃんとしてくれ」

「やーだ!やだ、やぁーだ」

 駄々っ子のように体を揺らしながらエリザはぐずっている。
 
 彼女は二十歳のオスカーより四歳も若いし、多少面倒なことを言われても、これまでは年下のワガママだと思いほほ笑ましく許せた。

 だが今は違う。無性に苛立ちが込み上げてきてしまう。
 
 ――こいつは、こんなに馬鹿だったか?

 もしや、今までは猫をかぶっていたのか? 第二王妃夫人の座を手に入れた途端、本性を現した……? いや、そんなまさか……。
 
 オスカーは片手で額を押え、目を瞑って頭を振る。これは悪い夢だ。自分の見そめた女性が、まさかこんな品性のない女性だったなんて信じたくない。

 祈るような気持ちで目を開けるが、視界に映ったのは、先程と変わらぬエリザの幼稚なふくれっ面だけだった。