「王様も王妃様も、昔からオスカー様には甘いからなぁ。ワガママ放題で育って来たんだろうさ。少しでも気に入らないことがあると癇癪を起す、まるで子供だ」

「おい、聞かれたらどうする。口を慎め」
 
 
 数々の不敬な陰口は、エリザの耳には届いたものの、オスカーには聞こえていなかったようだ。
 
 それもそのはず。オスカーは先程から心ここにあらずといった様子で、ビクトリアが去った扉をじっと眺め、時折ため息をついている。

「オスカー様、先程からぼうっとしていますが、大丈夫ですの……?」

「あっ、ああ。大丈夫だ」
 
 エリザに声をかけられたオスカーは、はっとしてエリザに向き直った。
 
 だがすぐさま先程と同じように、恋しそうに扉を見つめてしまう。

 エリザはむっとして、いきなり立ち上がった。

「急にどうしたんだい?」

 オスカーの問いかけに、エリザは投げやりな口調で答えた。

「私、もう疲れちゃいました! ここを出ましょうよ、殿下」

「それは駄目だよ。これも公務の一環。父上と兄上の名代として、皆と共に勝利を祝わなければ」

「殿下は公務と私、どっちが大事なのっ?」