「ふふっ、イアンはすっかりレティに夢中ね」

 部屋に入ってきたビクトリアが、ほほ笑みながらアシュレイの隣に座った。

「だね。それで? 子供劇団の面接はどうだった?」

 アシュレイの問いかけに、ビクトリアが「じゃーん!」と言ってカバンから紙を取り出した。そこには『イアン・クラークくん、合格』と書かれている。

「すごいじゃないか!」

 アシュレイが手放しで褒めると、イアンとビクトリアは揃って胸を張った。

「ふふん! 僕にかかれば、子供劇団の面接なんてヨユーさ」
「そうそう!余裕よ!」

 ドヤ顔でふんぞり返る二人。血は繋がっていないものの、ビクトリアとイアンはとても良く似ている。無邪気で明るい仕草なんてそっくりだ。
 
 家族は似てくるというが、本当だなとアシュレイは微笑んだ。

 
 国立劇場の舞台に立つビクトリアを見て、イアンが『演劇をやりたい』と言い出した。
 
 ちょっと前までは「アシュレイみたいな凄い騎士になる!」と言っていたのに、最近の夢は「ビッキーみたいなカッコイイ俳優になる!」ことらしい。

 さらにキャシーが演劇好きということも相まって、イアンは俄然(がぜん)やる気だ。