式場は、郊外にある小さな教会。
 招待客は、マクガレン一家やジェイクをはじめとしたアシュレイの騎士仲間や屋敷の使用人たちなど、親しい人ばかりの小さな挙式だ。

 
 私もアシュレイも、両親や親族はひとりも呼ばなかった。
 
 でも寂しくはない。だって、私たちにはもう大切な家族がいるから――。

 
 タキシードを着た小さな紳士が、大きな花束を持って近付いてくる。
 
 すごく緊張しているのか、ぎこちなく歩くイアンに、その場の人々が和やかなほほ笑みを浮かべる。
 
「こんな素敵な奇蹟を起してくれた神様に、感謝しなきゃね」

「神様だけじゃなく、俺たちの恋のキューピットにも感謝しなきゃいけないよ」

 ゆっくり近付いてくる恋のキューピットを見つめながら、私は「ふふっ、そうね」と応えた。
 
 目の前に来たイアンは、満面の笑顔で花束を差し出した。

「アシュレイ、ビッキー。二人とも、おめでとう!!」

「「ありがとう」」

 私とアシュレイに同時に抱きしめられた恋のキューピット――もといイアンは「へへっ」とはにかんだ。
 
 三人で抱き合う私たちに、より大きな拍手と祝福が贈られる。


 歓声に混じってマクガレンの男泣きがしたり、「パパ恥ずかしいわ」というおませなキャシーの声が聞こえてきたり、会場はとても賑やかだ。

 隣を見れば、愛する人と愛しい息子がいる。

 賑やかな笑い声と幸福に包まれたこの瞬間を、私は生涯忘れない――。