後日、アシュレイは二度も国を守った功績が認められ、伯爵位と領地、多額の報奨金を授与された。

 戦争中に負った傷は順調に回復し、さいわいにして後遺症も全くない。
 
 約束していた結婚指輪も三人で買いに行き、式の日取りも決めた。

 アシュレイが仕事で成功をおさめる一方、私にも人生の転機が訪れた。
 国立劇団の主催者に、うちで働かないかとスカウトを受けたのだ。

 なんでも、魔道録音機のナレーションを聞き、私の演技力や表現力を高く評価してくれたらしい。

『ぜひうちの劇団員に』と積極的に誘われたが、正直迷っていた。

 これからはアシュレイの妻として、またイアンの母親としての務めもある。

 それに、王国一有名な劇団のメンバーとしてやっていけるのか自信もない。

 だが、思い悩む私の背を押してくれたのは、やはり家族だった。

『家のことなら俺も協力するし、使用人も増やそう。あまり気負わず、お試しでやってみたらどう?』
 
『僕なら大丈夫だよ!ビッキーのお芝居見てみたーい!』
 
 二人の力強い言葉に励まされ、私は今世でも女優としての一歩を踏み出した。


 そして年の瀬が近づく寒い日。
 オスカーの母親である王妃陛下が、心臓の発作により急死されたと王室から発表があった。