御者が馬車の扉を開くと、走ってくるイアンの姿が見えて、夢心地から一気に覚醒した。

「ああっ、あんなに走ったら転んじゃう!」

「あははっ、うちのワンパク怪獣が元気で良かった」

 軽快な笑い声を上げながら、アシュレイは馬車を降りる。

 そして差し出された手を取り下車した私を、アシュレイはひょいっと抱き上げ歩き出した。

「あ、アシュレイ様!? ダメです! イアン様が見ています!」

「別に見られても問題ないだろう? 初めて会った時の名誉挽回させてよ」

「だって怪我も……」

「君が暴れると傷が開くかもね。だから大人しくしていて」

 そう言われると、動くわけにはいかない。
 大人しくなった私を見おろして、アシュレイはさらに楽しそうに笑った。

 そんな私達の元に、イアンが駆け寄ってくる。

「アシュレイ、おかえり!」

「イアン、ただいま」

「へへっ、二人とも早速いちゃいちゃしてるぅ~」

 イアンの言葉に真っ赤になる私と、「そりゃあ夫婦だから」と何故かどや顔するアシュレイ。

 私は彼の腕の中から下りると、三人で手を繋いだ。
 イアンを真ん中にして、横一列に並んで屋敷への道を歩く。

 三人が揃い、しみじみ実感する。

 あぁ……ようやく平穏な日常が戻ってきた。