仲睦まじい先輩夫婦の後ろ姿を眺めていると、ジェイクが駆け寄ってきて敬礼した。

 上司の無事を確認し、感極まった様子で目を潤ませている。

「ジェイク、お前にも心配かけたな」

「無事で何よりっす」
 
 二人は言葉少なに互いの無事と健闘をたたえ合う。

「この魔道録音機は、証拠確認のため少し預からせて貰いますよ。では隊長、良い休暇を」

 そう言って、ジェイクはクマ人形を携え、軽く一礼して詰め所の方に去って行った。

「俺たちも行こうか」と、アシュレイが私の手を握る。私は頷き返し、繋ぐ手にそっと力を込めた。

 
「ええ、帰りましょう。私たちの家に――!」


 それから、馬車に乗り込むまでずっと、すれ違った騎士や貴族、市民はみなアシュレイを尊敬と感謝の眼差しで見つめていた。

 車内で二人っきりになると、アシュレイは私の肩を引き寄せ抱きしめた。

 頬や唇に口づけする表情はとても幸せそうだ。

 笑顔の彼を見つめながら、私は思わずふふっと微笑んでしまった。

「なぜ笑うの? 俺の顔に何かついてる?」

「いえ、何も。ただ、ちょっと昔のことを思い出しちゃって。初めて会った時のこと、覚えてます? 私が階段から落ちそうになった戦勝記念パーティのこと」