「そ、んな……嫌だ。なぜ、僕がこんな目に……。僕は悪くない! 母上、ははうえ、たすけて!」

 騎士に両腕を掴まれ連行されていく。オスカーは、大広間を出る直前まで『父上!母上!』と叫んでいた。

 パタンと扉が閉まり、悲鳴がだんだんと遠ざかる。

 オスカーが去った扉を見つめ、第一王子が呆れた様子で呟いた。

「他人を虐げ、命を奪うことに何の罪悪感も抱かないとは。我が弟ながら呆れる。己の悪行を自覚できない事こそ、お前の最大の罪だよ」

 その後、ロジャースを訴えないとアシュレイが表明したことにより、実行犯である彼には特別恩赦が下りた。
 
 さらに勝利の真の立役者であるアシュレイには、最大の名誉である勲章が授与され、後日さらに褒賞が与えられることとなった。

 
「騎士の諸君、此度の戦、誠に大義であった」

 
 国王陛下の労いの言葉とともに、波乱に満ちた戦勝記念パーティは静かに幕を閉じた――。


 
「ビクトリア――!」

 終宴(しゅうえん)と同時に、アシュレイが駆け寄ってきて、私の体を強く抱きしめた。


「おかえりなさい。無事に帰ってきてくれて……ありがとう」