アシュレイが名を呼ぶと、広場にもうひとり男性が現れた。
 
 御前に(ひざま)いた騎士を見た途端、オスカーの顔が驚きを通り越し、絶望に染まった。顔面からダラダラと冷や汗を流し、「な……なんで……」と掠れた声で呟く。
 
「あの戦場で一体なにが起きたのか、この者に説明させたいのですが、発言をお許し頂けますでしょうか」

 アシュレイの問いに、陛下が物々しく頷く。
 
 すると(ひざまず)いて頭を垂れた男性騎士が、静かな声で語り始めた。

「わたしは、オスカー殿下の親衛隊長を務めておりますロジャースと申します。わたしは……許されざる罪を犯しました」

 声を震わせながらも、必死に経緯を話すロジャース。

「殿下に『アシュレイ・クラークを殺せ』と命じられたわたしは、戦場のどさくさに紛れ、アシュレイ様を背後から斬りつけました。そして海へ突き落とそうと……。ですが、オスカー殿下に思いっきり蹴り飛ばされ、アシュレイ様共々、崖から転落いたしました」

 オスカーが「でたらめを言うな!」と叫び、言葉を遮る。だがロジャースも負けじと、事件の真相を語り続けた。