「アシュレイ様に何をしたの」

「僕は何もしていないよ。言いがかりはやめておくれ」

「全部あなたのせいなのね。私への復讐のつもり? であれば、恨む相手を間違えているわ」

「なんだって?」

「婚約破棄して私との関係を終わらせたのは殿下です。恨むべきは、私でもアシュレイ様でもなく、過去のあなた自身よ」

 毅然と言い放つと、オスカーが怒りで顔を真っ赤に染め上げた。眉間に盛大にしわを寄せ、奥歯をギリッと噛みしめる。

「さすがに温厚な僕でも我慢の限界だよ。僕はね、他人に侮辱されるのが大嫌いなんだ。そうやって反抗的な態度を取るところが、君とアシュレイはそっくりだよ。――反吐が出る」

 オスカーは小声で口汚く私を罵ると、衛兵たちに向かって叫んだ。

「この女を捕らえろ! 処刑日が決まるまで、絶対に牢から出すな! あぁ、そうだ。クラーク家の屋敷にいる子供も捕らえ、二人まとめて牢獄送りにしろ」
 
 この人、イアン様にも手を出す気なの!?

 早く屋敷に知らせて逃がさなきゃ――。

 だが、私を拘束しようと衛兵の手が伸びてきて、進路を阻まれる。
 
 
 ――アシュレイ……アシュレイ……!