アシュレイの部下ジェイクだ。

 何故か片手には、私がアシュレイに渡した桃色のクマ人形を携えている。

「わたくし、第一騎士団所属のジェイクと申します。殿下のお話の途中で恐縮ですが、皆様に聞いて頂きたいものがございます」

「何だ、それは」

「これは記録のため、作戦会議中の会話を録音した魔道具です」

 怪訝な顔をするオスカー。
 無言で頷き、ジェイクに許しを与える陛下。
 固唾をのんで状況を見守る騎士と聴衆。

「みなさま、よくお聞き下さい」
 
 大勢の前で、ジェイクは再生ボタンを押した。

 すると、しんと静まり返った大広間にオスカーとアシュレイの声が流れる。


『目に見える戦果がなければ、僕の武勲を証明できないだろう』

『殿下、武勲よりまずは国民のことを最優先にお考え下さい』
 
『うるさい! 大義を成すためには犠牲はつきものだ。逃げ遅れているのは、どうせ孤児か、病気の役立たずか、老人だろう? そんな生産性のない輩など、守るに値しない!』
 
 
 オスカーの愚かな発言の数々に、その場にいた人々は――国王と王妃さえも、眉をひそめた。

 自分の利益のため、国民の危険を顧みず、無謀な策を実行しようとしたオスカー。