「嘘でしょ」
「アシュレイ様が殿下を殺害しようとしたの?」
「自滅って、一体どういうことなんだ……」

 人々が口々に囁き合う。

 ……あり得ない。アシュレイがそんなことをするはずがない!

 オスカーが辺りをぐるりと見回し、私を見つけた瞬間、勝ち誇ったように目を細めた。

「あなたを殺そうとしたとは……一体どういうことです?」
 
 オスカーの実母である現王妃殿下が、我が子を案じる母の顔でオスカーに問いかける。
 
「奴は戦場で乱心したんですよ! 作戦会議で僕と意見が対立して憤慨していましたからね。初陣の僕に手柄を取られるのが、許せなかったんでしょう」

 玉座からやや離れた場所にいる第一王子が、王妃とオスカーに冷めた眼差しを向ける。
 まるで『なんて馬鹿馬鹿しい茶番劇だ』と言いたげな様子だ。
 
 だが、オスカーは冷ややかな視線をものともせず話し続ける。

「戦場で奴が僕に剣を向けた瞬間、親衛隊長のロジャースが身を(てい)して庇ってくれました。彼のおかげで僕は無事でしたが……ロジャースはアシュレイと共に崖から転落してしまった。崖下は荒れ狂う大海原。きっと二人とも……生きてはいないでしょう」


 するとその時、隊列からもうひとり騎士が前に出てきた。